政治目的の経済介入は中国のお家芸

政治目的の経済介入は中国のお家芸 日本企業は結束し干渉を拒否せよ

<<WTO精神にもとる行為>>

 クリントン時代初期の国防総省国際局長のチャールズ・フリーマン氏は、5月30日付の米紙ウォールストリート・ジャーナルで、米台自由貿易協定 (FTA)の問題を論じているが、その中で、この問題に対する中国の態度 を次のように言っている。

 「中国は台湾の陳水扁総統に対してほとんど異常なまでの反感を抱いており、そのため、陳総統がほんのわずかでも台湾が国際的に動ける『余地』を獲得しようとすれば、それを妨害するためにほとんど何でもするだろう。中国は米台FTAか中国でのビジネスかどちらかを選ぶよう、米国多国籍企業の代表に迫ることも辞さない。そして台湾との通商が、人口13億の中国市場への野心を犠牲にすることを意味する場合、台湾2300万人との通商拡大の利益の方を選ぶ企業はほとんどないだろう。従って今のところ米国のビジネス界では、陳総統が思い描く米台FTAへの支持は集まっていない。」

 これが中国に批判的な保守的な論者の意見ならば、何も目新しいことではない。誰もが、中国ならそのくらいのことはするだろう、と思っている。 

 ところがフリーマン氏は親中派として知られている人であり、論文の結論も米台間のFTAに好意的でない。つまり、中国が政治的理由で臆(おく)面もなく経済問題に干渉してくるということは、親中、反中を問わず世界の識者の常識だということである。  

 しかも、これは戦後の世界経済の繁栄を支えてきた自由貿易原則 – 最近の中国はその最大の裨益国である – という商業道徳に違反する行為である。法的にも、世界貿易機関(WTO)加盟国に対する差別待遇としてWTOの精神に違反する行為である。

<<罪小さくない同友会提言>>

 これは他人事ではない。日本にとっても起こりうる事態である。中国にとって、靖国などは痛くも痒(かゆ)くもない問題であるが、台湾問題となると違う。何かの折に、日本企業が13億人と2300万人とのどちらかを選ぶ選択を迫られるシナリオを予想しなければならない。  

 こういう政治的目的による民間のビジネス介入に対抗する措置としてはそれはWTO精神に照らして違反が明らかなのだから、政府がその都度抗議すべきである。  ただ、それをすると、企業が日本政府に言いつけたということだけで、また、その企業がハラスメントの対象になる恐れがある。  

 やはり基本は、各企業が一致結束して、政治的理由によるビジネスへの干渉を拒否することにある。一社が先駆けして中国に媚(こ)びると、他が皆迷惑する。経済同友会の提言など、その最たるものである。新聞報道によると、提言をすぐに中国大使館に届けたという。なんという卑しい行為であろうか。  

 多数決というけれども、企業としては同友会の提案を支持しなければ中国のハラスメントに遭う危険があるから、支持した方が安全であると思って支持せざるを得なかった企業が大部分であろう。卑しい行為といわれても、会社のためということならば、背に腹は代えられない。  会員企業を、こういう卑しい行為に走らねばならないように仕向けた同友会の浅慮の罪は小さくない。  

 東京の同友会は、関西の同友会に対してもひどい仕打ちをしている。今回の結果、東京の同友会の提案を支持した企業は中国に良い顔ができて、その分だけ関西の企業は中国に対して辛い立場に立つことになる。

 しかも、関西の企業の方が中国依存度が高い。東京の同友会は、同じ経済界の関西に対して惻隠(そくいん)の情はないのであろうか。しかも、東京の提言は関西の後で出ている。

<<自らの優秀さに誇り持て>>

 日本企業が一致して毅然たる態度を取るのが正しいとしても、そうすると外国との競争に負けないか、という心配はあろう。会社のためを思えばもっともな心配である。

 ただ、私の印象では日本企業は既に差別を受けている。10年以上前であるが、瀋陽を訪問したときに、日本からの投資は抑えて、アメリカからの投資を優先させていますという説明を当局の人から聞いた。  

 それだけ差別した上で、なおかつ日本の資本技術が必要だから受け入れているのであって、今以上に差別をすることは中国側の利益に反する状況に既になっているのだと思う。  

 日本のビジネスの優秀さに誇りを持って、胸を張って是々非々で臨むべきだと思う。